東京高等裁判所 昭和36年(ツ)81号 判決
按ずるに建物保護に関する法律第一条第一項は建物所有のため一筆の土地の一部を賃借した場合にも適用があり、この場合借地上の建物につき登記を経たときは、賃借地の全部が現実に宅地として利用されていると否とに拘らず賃借権の対抗力は賃借地の全部に及ぶと解すべきであつて、右の対抗力は現実に賃借人が宅地として利用している部分に限ると解すべき法文上の根拠はない。而してその後分筆により賃借地が二筆に分れた結果、そのうちの一筆の土地には登記した建物が存しないこととなつても、賃借地の範囲が縮少するいわれはなく、その賃借権の対抗力は既登記建物の在しなくなつた一筆の土地にも及ぶものと解すべきであつて、この一筆の土地が隣地の他人所有の建物の敷地乃至庭と見誤るような外観を呈していても、ただそれだけで右の一筆について賃借権の対抗力が消滅する道理がないから、第三者が右の一筆の土地に他人の賃借権が存しないものと誤信してその部分の土地の所有権を取得しても、賃借人は第三者に対し右部分の土地の賃借権を依然対抗しうるものと解するのが相当である。所論引用の大審院大正十三年(オ)第一〇五一号大正十四年四月二十三日言渡の判例は借地権の範囲が分筆等の事情によらず当初から不分明の場合はその範囲は特別の事情がない限り建物の敷地及び建物を所有し利用するに必要な範囲と解すべきものであるとしたもので、本件に適切でない。
(梶村 室伏 安岡)